たなかじま家具店は、『心地よい暮らし』『家にいて楽しさのある暮らし』が生まれる家具を使っていただきたいと考えています。
なかでも家族で共にする食事の時間は、単に食べるだけでなく、家族の会話があり、お互いの顔を見ながら笑い合ったり、体の栄養を取り、心の栄養を生む大切な家族の時間を作ります。
今回の家具コラムでは、日本人に合った食卓について考えてみたいと思います。
日本人の食卓を考える【低座ダイニングのすすめ】展示会についてはこちら
低座ダイニングをお勧めする理由
皆さんのお家の食卓はどのような形でしょうか?
一般的な食卓は、高さ70~72㎝のダイニングテーブルや、高さ35~38㎝の座卓が多いと思います。
しかし、一般的なダイニングテーブルに合わせた椅子は、『足がつかなくて落ち着かない』『長時間座っていると疲れる』といった声をよく聞きます。
それは日本人の身体寸法に合っていないことや、靴を脱ぐ日本の生活スタイルに高さが合っていないなどの理由が考えられます。
また床に座る座卓の暮らしは日本ならではの生活スタイルですが、年齢が増すに伴い、床に座る姿勢や、立ち上がる時の体への負担が大きくなってきます。
低座ダイニングは、一般的なダイニングと座卓の中間、テーブルの高さが61~63㎝、椅子もテーブルに合わせて座面の高さが37~38㎝、そして大きな座面が特徴です。小柄な女性でも無理なく足が床につき、しっかり座ることができます。
低座ダイニングはテーブルが61㎝で低く感じられますが、食器を持ち上げて食べる日本の食事スタイルに合っているといえます。
【低座ダイニング】は日本人の身体と暮らしにあった食卓と言えるのです。
少ない家具で一つの空間をのびのび使う【リビングダイニング家具】
リビングとダイニングを区別せず、少ない家具で一つの空間をのびのび使いたい。
そんな人たちから支持されているのが、ソファーと低めのテーブルを組み合わせたリビングダイニング家具。
しかし、【座る】ということに着目すると、
腰をしっかり支え、一人一人の身体寸法と座り方に合った低めの椅子をお勧めしたいと思います。
いろいろな座り方ができる、低座の椅子と低めのテーブルを組み合わせた【低座ダイニング】は、日本人の多様な暮らし方に合ったリビングダイニング家具といえます。
一つの空間を様々な用途に変化させながら多様に使いこなす暮らし方をしてきた日本人にとって、【低座ダイニング】は食事はもちろんのこと、くつろぎやデスクワークでも活躍します。
低座のダイニングチェア
ここからは、具体的に低座の椅子をご紹介していきます。
今回ご紹介するのは、
・低座ダイニングの元祖ともいえる、モノ・モノ(東京)の低座椅子
・モダンな空間に映える、匠工芸(旭川)のSPREADチェア
それぞれの椅子が生まれた背景や、椅子の特徴をご紹介していきます。
あぐらのかける 男の椅子
食事もくつろぐこともできる、低座椅子のベストセラー
工業デザイナーの秋岡芳夫が、1981年に発表した低座椅子の傑作で、40年以上ロングセラーを続けています。
床座に慣れ親しんだ日本人のためにデザインしたこの椅子は、座布団並みにたっぷりと広い座面のおかげで、男性ならあぐらをかいたり、女性なら膝を曲げて斜め座りしたりと、気ままな姿勢で過ごせます。
背もたれと一体化したひじ掛けは、立ち上がる際にしっかりと手をつけるように、ひじ掛けの先端が広くなっています。
「小柄でも足が床について安心」「ひじ掛けの先に手をしっかりとつけるので、立ち上がるのが楽」「斜めに向いても座れるのがいい」というのが人気の理由です。
秋岡氏は「トヨさんの椅子」を長年愛用していましたが、60歳を過ぎ、立ち上がるときの補助として、ひじ掛けの必要性を痛感し本作を発表しました。
ためにデザインした低座椅子の傑作。あぐらもかける広い座面、上半身の動きを妨げない末広がりの肘掛けが特徴です。
3台連ねると長椅子になる親子の椅子
秋岡芳夫デザインの大小3つの椅子からなるダイニング用の長椅子です。
椅子同士をぴったりくっつけられるように座面が菱形になっていて、アーム(肘掛けと背もたれ)の形もカーブがゆるやかになっており、全体的に細くなっています。
写真のように大小の椅子を組み合わせると、親子が仲よく肩を並べて座ることができます。
ひとりのときなら下写真のように両足を伸ばしてリラックスすることができます。
*大・小それぞれの椅子を1脚づつご購入していただけます。
小:W55㎝・D50㎝・座面高35㎝
3台を連ねて使うことを前提にデザインされた親子の椅子ですが、セットではなく単品で使っているユーザーも少なくありません。
幅広のどっしりしたトヨさんの椅子
幅広のシートが体圧を分散するから、デスクワークにもおすすめ
日本人のための椅子を生涯にわたり研究した豊口克平が、1955年にデザインした低座の名作椅子です。
お尻の形に沿ってカーブした座面が体重を分散するとともに、幅広の背もたれが腰から肩甲骨の下あたりまでをしっかりと支えてくれるので、長時間座っても疲れにくいのが特徴です。
「男の椅子」がダイニング向きとすれば、こちらはリビングや書斎向き。
骨太な部材を使っているため、やや重いのが難点ですが、安定感は抜群。
大柄な男性が座っても、あるいはお子さんを抱っこしたまま座ってもビクともしません。
脚先の接地面が広いので、畳の上に置いて使うこともできます。
発表当時、秋田県庁の応接室の椅子として採用されたといわれています。その後すぐに廃番となりましたが、豊口氏と交流のあった秋岡芳夫がこの椅子にほれ込んでいたことから、モノ・モノが1983年に復刻し、40年以上製造販売を続けています。
プロダクトデザイナー豊口克平が1955年にデザインした万能椅子。雪の塊の上に腰かけ、お尻や背中の形を写し取ることで体に負担の少ない椅子の理想形を導き出した。食事だけでなく、デスクワークにもお勧めです。
モダンな空間に似合う スプレッドチェア
プロダクトデザイナー松岡智之デザインのチェア。
幅の広い座面と大きく広がる背面がゆったりと体を包み込み、落ち着きと安心感が得られる椅子です。
背面は横までカーブして覆っているので体を少し横に振った姿勢でもしっかりと体を支えてくれます。
座りながら姿勢を変えることができるため、長時間座っていても疲れにくい椅子になっています。
SPREADは「広がり」という意味のほか「食卓にごちそうを広げる」という意味もあり、家族の幸せな食卓をイメージしてデザインされています。
W61㎝・D60.5㎝・座面高37㎝
プロダクトデザイナー松岡智之のデザイン。包み込まれるような背もたれにより、様々な姿勢で座ることができます。
長時間の使用でも疲れにくいため、食後の団欒を楽しむのにぴったりのダイニングチェアです。
低座の椅子に合う 低いテーブル
角のないテーブル
こたつ気分でほっこりとくつろげる柔和なデザイン
角テーブルの使いやすさと、丸テーブルのやさしい印象を併せ持つ、モノ・モノオリジナルの低座仕様テーブル。
天板の大きさは縦横とも115cm。2人暮らしにぴったりなコンパクトサイズです。
角が大きく丸めてあるので、部屋のコーナー部分に置いても難なく使えます。
天板の高さは61cm。はじめて座ってみると、天板の位置がやや低く感じるかもしれません。
これは器を手に持って食事する日本人の食生活を考えてのこと。
人が集まる際はコーナーの部分にスツールを置けば、一度に8人が座ることができます。
W115㎝・D115㎝・H61㎝
スリム楕円テーブル
「一机多用」の暮らしを実現できる、低座仕様の大きなテーブル
「親子の椅子」や「トヨさんの長椅子」と相性抜群のテーブルです。
「男の椅子」を2台横並びに置くのにもぴったりで、天板サイズは幅180×奥行90cmと大きめですが、全体がゆるやかにカーブしているため、長方形のテーブルほど圧迫感がありません。
天板の高さは61cm。一般的なテーブルより10cmほど低く設定されています。
はじめて座ると、天板の位置が少し低くく感じるかもしれません。
これは食器を手に持ち、箸を使って食べる日本人の食生活を考えてのこと。
斜めに向き合って座るので、大皿料理や鍋を囲むときにテーブルのセンターに手が届きやすく、対話がしやすい。
テーブルの端がカーブしているので、壁に近接してテーブルを置いても、椅子を大きく引かなくても人が出入りしやすい、といったメリットがあります。
w80㎝・D90㎝・H61㎝
スプレッドテーブル
スプレッドチェアに合わせてデザインされた、スプレッドテーブル。
全体的にやさしい丸みを帯びたデザインで手に触れる感触が気持ち良いテーブルです。
丸と長方形があり、それぞれにサイズオーダーができるのも嬉しいテーブルです。
高さはスプレッドチェアに合わせて低めの62㎝。何時間でもおしゃべりがしたくなる低座のダイニングテーブルです。
直径100㎝、120㎝、140㎝・高さ62㎝
W165~210㎝・D90㎝・H62㎝
秋岡芳夫が提唱する低座の暮らし
工業デザイナー秋岡芳夫が唱えた《一机多用(いっきたよう》、少ない持ち物で豊かに暮らすという考え方は、モノにあふれた現代にこそ必要な考え方と言えます。
日本人にとって【座る】とは、《椅子に座る》《正座する》《あぐらをかく》といろいろな座る形があります。
さらに日本人は昔から、一つの空間を様々な用途に変化させながら多様に使いこなす暮らし方をしてきました。
靴を脱ぎ、食器を手に持って食事する日本人にとって一般的なダイニングは日本人に合っているとは言えません。
秋岡芳夫の【日本人の身体尺度に合わせた暮らし】を再考してみましょう。
秋岡芳夫の言葉
今のLDKの家具の数、多すぎます。一つでもいいから減らして広々と住みましょう。まず、テーブル。ダイニング用とリビング用とを分けないで一つで兼用しましょう。
高さが61㎝~63㎝の大き目なテーブルなら《一机多用》。食事・団らん・来客・くつろぎの一杯・書きもの、すべてが一つで間に合います。
そのテーブルに高さを合わせて、座面高38㎝前後で、肘がなくて座のクッションが硬めの椅子を選べば、この椅子も「一椅多用」。リビングにもダイニングにも兼用できます。この「一机多用なテーブル」と「一椅多用な椅子」を組み合わせて使うことで、部屋がぐんと広くなります。
一椅多用に使う椅子の座は思いきり広いのがいい。「座布団くらいないとゆっくり腰掛けてられないよ」と、十数年大きな椅子で暮らしてきた経験から、ぼくは椅子を買う相談に来た人に教えています。「バーのカウンターの腰掛けみたいじゃあなくて、ご飯も大きな椅子で食べたほうがおいしいんだ」と。
秋岡芳夫(あきおかよしお) 文:「暮らしのためのデザイン」新潮社より抜粋
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